お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

ハイパーインフレーション

ハイパーインフレーション

お金は使うと無くなることを公理として、基点として、お金についての考えを進めると、付加価値とお金が対生成と対消滅する関係となる。付加価値とは、経済活動によって新たに生み出された価値である。付加価値がお金と対生成するのであるから、付加価値は既存の価値を受け継ぐ必要は無く、無から生成されると考えて良い。さらに、経済における保存則が成立すると考えると、付加価値とお金の合計が完結した保存性を示す必要があり、経済外部の価値と関連することは許容されない。即ち、経済は自然の上に創発された階層であり、独立した保存則を持つ。人間の脳が生み出した新しい階層空間であり、人間だけが理解できる、自然を覆う付加価値階層が存在している。現実空間に仮想現実のコンピュータ映像を重ねて見ている状態と類似している。

このように、付加価値とお金の合計が保存則に従う空間が、経済であることを説明する例題として、ハイパーインフレーションを取り上げる。

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ハイパーインフレーションは、貨幣が紙くずになる現象である。貨幣が紙くずになる現象は、比較的珍しい現象であり、原理の研究もされていない。貨幣をばら撒けば、簡単にインフレになり、ばら撒きすぎるとハイパーインフレーションになると思うかもしれないが、給付金ではインフレは起きていない。貨幣の増加とインフレが無関係であることは、日本の貨幣政策によって、既に実証されている。

貨幣が紙くずになる現象は、経済の崩壊を示しており、保存則が破綻した状態と考えられる。反対に、保存則が維持されていれば、経済は崩壊せず、ハイパーインフレーションも発生しない。給付金の場合、負債である赤字国債と資産である銀行預金を同額生成し、銀行預金を家計にばら撒いている。これでは、付加価値と貨幣の合計は保存則を維持した状態であり、ハイパーインフレーションは発生しない。付加価値+貨幣=負債が経済の保存則である。固定資産+流動資産=負債、と示せばバランスシートである。

ハイパーインフレーションを発生させるには、純粋に輪転機を回して一万円札を配布する必要がある。本物と見分けの付かない偽札をばら撒く状態である。この操作により、付加価値と貨幣の合計の保存則は破綻する。このような偽札を官製偽札とする。通常の経済活動では、生産額と購入額は同額であり、フローとしての保存則が成立し、バランスシートによってストックの保存則も成立している。そこに、官製偽札がばら撒かれると、生産された商品はすべて売買が成立している状態で、さらに官製偽札の購買力が余る。この余剰購買力は中古品、転売品を高値で購入することになる。転売によって官製偽札の所有者は移動するが、依然として官製偽札は購買力を失わない。転売の連鎖によって、中古品の値段が継続して上昇する。この購買力が、既存の生産設備に向かうと、生産設備の価格上昇、生産品のコスト上昇と発展し、物価上昇となる。一度官製偽札を発行した政府は、物価上昇に対して、追加の官製偽札で財源を確保する。物価は加速度上昇し、貨幣は紙くずとなる。さらに、生産コストの計算が不可能となり、工業生産も停止、経済は破壊される。

それでは、通常のインフレはどのような現象であろうか。インフレは資本蓄積である。生産された付加価値が固定資本として蓄積されると、商品コストが固定資本に比例して上昇し、商品価格即ち物価が上昇する。この資本蓄積によって、付加価値+貨幣=負債で示される保存則に不均衡が発生する。この不均衡を放置すると、ハイパーインフレーションと同様の現象により、バブル経済となる。バブル経済を抑制するには、負債を増加させ保存則を維持する必要がある。負債を増加させる仕組みが金利であり、資本蓄積と金利負担が同額となるように金利を調整する担当が中央銀行である。金利が不十分な状態が好景気、金利が過剰な状態が不景気であり、中央銀行は景気を指標として金利を決定する。概算としては、インフレ率=利子率である。

このように、経済は人間が生み出した階層であり、保存則も人間が管理、維持する必要がある。保存則の維持が経済の安定であり、保存則の不均衡が景気変動となる。さらに、不均衡を放置するとハイパーインフレーションとなり、経済は崩壊する。尚、インフレは資本蓄積であり、インフレに伴う保存則の不均衡が好景気である。インフレと好景気は異なる現象であり、インフレ不景気も存在する。