名目と実質
名目と実質
銀行の無い経済では、企業が賃金を発行し、同額の付加価値を生産することにより、マネーストック=資本ストックとなる。これは保存則である。貨幣は付加価値と対を成し、対応関係は保証される。これは、銀行が預金と貸付金を対で発行する信用創造と同様であり、対応関係は不変である。
この銀行の無い経済では、経済成長と物価上昇は非常に近い概念である。経済成長は生産量の変化であり、フローの増加を示す。物価上昇は資本ストックの変化であり、ストックの増加を示す。経済成長する為には、先行して生産設備の増強が必要であり、資本ストックが先行して増加する。物価が上昇し、追いかけて経済が成長する。但し、効率の悪い資本や無用な資本を蓄積すると、物価だけが上昇することになる。経済成長には、効率の追求と資本の蓄積が必要である。
物価の関連する指標に、名目国内総生産と実質国内総生産がある。この指標についても、銀行の無い経済における定義を確認する。銀行の無い経済では、貨幣と付加価値の対応関係は不変である。物価は、資本ストックの増加に必要な生産量が、商品価格に上乗せされることで、体感となる。これは、資本蓄積分を余分に生産している状態であるから、
と示すことができる。これに対し、物価指数の定義式は、
であるから、資本蓄積を余分な生産と見なし、比率で示した値が、物価指数である。物価の概念と一致する。物価指数が生産全体の比率であるのに対し、インフレ率は上昇分のみの比率を示し、インフレ率=物価指数-1、の関係である。
銀行の無い経済では、インフレは資本蓄積であり、インフレ率は実質国内総生産に占める資本蓄積の比率を示す指標である。そして、実質国内総生産は、名目国内総生産から将来の為の生産である資本蓄積を差引いた、現在の為の生産を示す。即ち、消費量に対応した指標が実質国内総生産である。
銀行の無い経済では以下の関係である。
貨幣と付加価値の関係は不変
インフレは資本蓄積
マネーストック=資本ストック
インフレ率=資本蓄積÷実質GDP
資本蓄積=資本形成-資本減耗