お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

価格と利益

価格と利益
経済を付加価値のフローとストックと考えると、収支式をフローダイアグラムとして表現できる。定常状態では、資本形成と資本減耗が一致すること、資本形成は賃金の集積であること、からW=I=D=Cの関係が成り立つと考えた。この場合、商品価格は資本減耗の2倍と確定し、価格設定の自由度が無い。実際の商取引との対応については、さらに考察が必要である。

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図5 経済は天然資源を所有物に変換する装置

もうひとつ定常状態の考察から、賃金は経済の継続を目的として決定される必要性が明らかとなった。経済の継続は文明の維持であり、これは野生動物ではない人間の存在理由であり、この結論は人間にとって合目的的である。賃金は、結果に対する報酬ではなく、事業継続に対する奨励と考えられる。或は、賃金は未来の資本形成から受け取ると考えても良い。

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過去と未来

経済成長は国内総生産を指標とするが、個人が本当に求めるものは、消費である。現在の日本では天然資源を直接消費することはなく、消費対象は全て資本ストックであり、資本ストックの消費が資本減耗である。よって、資本減耗が生活の豊かさを示す。資本減耗は資本ストックを滞留時間で割ることで求められる。資本減耗の増加は、資本ストックの拡大と滞留時間の短縮で実現できる。資本ストックの拡大は、資本蓄積であり、資本減耗より資本形成が大きい状態が必要である。その為には、資本減耗より賃金が大きい必要がある。

フローダイアグラムでは、定常状態W=I=D=Cから、資本蓄積I>Dに移行すると、必然的にW>Dとなる。この時、Cも変化し、収支式W+D=I+Cは維持される。

任意の商品について考える。資本減耗の2倍を価格として販売が維持される限り、商品は継続的に生産可能である。消費量の変動は設備の稼働時間で対応可能であり、稼働時間が長くなれば、資本減耗が促進され、設備の更新期間、即ち滞留時間が短くなる。長時間稼働で対応できない場合は、設備増強が必要であり、その分の価格引き上げが必要である。この時、商品は品薄状態であり、消費者も値上げを許容する。或は、品薄状態から値上がりし、利益が発生する。この利益は資本形成に当てられ、業界全体の賃金増加となる。利益を自社社員のボーナスとすると、設備の維持が出来なくなる。

このように、フローダイアグラムから、商品価格の供給曲線を推定できる。生産量の増加に対して価格一定の区間があり、臨界点から価格の増加する曲線となる。生産量の下限値は各社の最低賃金で決まる。設備増強で効率化された場合、臨界点は供給量が増加し、価格が下がった位置に移動する。

フローダイアグラムから得られる結論。

事業継続に必要な価格は資本減耗の2倍。価格上昇による利益は、未来の設備増強費の前借りであり、設備投資が必須となる。増産による見かけの利益は、現有設備の資本減耗であり、設備維持費用とボーナスの原資である。