お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

商品価格の収支式 

商品価格の収支式 

経済全体では、生産された商品は消費と投資に振り分けられる。ここでの生産とは、生産者が製造し、誰かが買い取ったものを示し、造っただけでは生産ではない。購入者が個人的な利用を目的とすれば、消費として集計される。購入者が新たな商品の製造や販売を目的とすれば、投資として集計される。そして、購入者の目的は消費と投資に限定される。ここから、

  (1)  総生産 = 消費+投資

これは定義であり、一義的に決まる。また、この投資は、現状の設備を維持する為の投資と設備の増強を目的とする投資が含まれる。よって、

  (2)  総生産 = 消費+現状維持投資+設備増強投資

  (3)  総生産 = 消費+資本減耗+(資本形成-資本減耗)

  (4)  総生産 = 消費+資本形成

式(4)には、資本減耗が隠れていることが分かる。総生産から資本減耗を引くと純生産となる。

次に商品価格について考える。価格は外注費、減価償却費、人件費、利益から構成される。利益は最終的に誰かに分配されるか内部留保であるから、非常に長い時間で集計すると考えると、利益は将来の人件費と先取りした減価償却費である。よって、利益は人件費と減価償却費に振り分け、価格は式(5)である。

  (5)  価格 = 外注費+減価償却費+人件費

外注費は別の企業の商品価格であり、価格の合計が総生産であるから、

  (6)  価格 =(減価償却費+人件費)+減価償却費+人件費

  (7)  価格 = 減価償却費+人件費

  (8) 総生産 = 減価償却費+人件費

ここで、すべての人件費が労働に伴うと単純化し、人件費=賃金とする。また、減価償却費は資本減耗と同一と考えると、式(9)である。

  (9) 総生産 = 資本減耗+賃金

式(4)総生産=消費+資本形成と組み合わせると、

 (10) 資本減耗+賃金 = 消費 + 資本形成

 (11) 賃金 - 消費 = 資本形成-資本減耗

式(10)において、資本減耗と消費を入れ替えれば、式(11)である。賃金-消費は、収入-支出であり、これは貯蓄である。一方、資本形成と資本減耗の差分は資本の増加分に相当し、資本蓄積と定義する。よって、

 (12) 貯蓄 = 資本蓄積

式(12)は、生産の定義から一義的に導出された結論である。

f:id:yunopower:20210502101051p:plain

貯蓄=資本蓄積


この関係は、貯蓄=投資と示されることが多いが、純貯蓄=純投資、粗貯蓄=粗投資であり、純貯蓄≠粗投資であることに注意が必要である。 

ここからは考察であり、推論を含む。

この関係式を単独で解釈すれば、お金の貯蓄と生産物の蓄積が一致し、お金と生産物が等価の保存性を持つことを示している。このような性質を持つ生産物は付加価値と定義される。お金は厳密な加減算が可能であり、時間的な保存性を持っている。付加価値も同様に保存性を持ち、腐ることや増殖することは無い。しかし、実際の生産物は腐ることや老朽化する。パソコンなどは全く使用しなくても、ソフトの高度化、複雑化で利用できなくなる。このように実用的な性質と付加価値の性質には違いが有り、経済の考察において、付加価値と実用性を混同すると、混乱することになる。

任意の商品を欲しいと思う気持ちは人それぞれであり、価値観が違うと表現される。しかし、付加価値としての商品は不変であり、厳密に会計処理が可能である。