お金にならないお金の話

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政府支出

政府支出

経済を付加価値のフローとストックと考えると、収支式をフローダイアグラムとして表現できる。付加価値の流れであるので、人の存在は必ずしも必要でないが、モデルの考察から、ストックには管理する経済主体が必要であることが分かる。経済は、実体のある現象であると同時に、約束事で成立している。この為、ストックには、独立の維持の為に、それぞれに経済主体が必要である。

最も単純な蓄積型経済は、企業が管理する資本ストックと家計が管理する貯蓄から構成される。ここに、政府を加えると政府の管理するストックとその流入と流出のフローが追加される。企業と家計で成立している経済に追加される為、三者が対等とはならない。図3に示すように、企業と並行する流れとなる。

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図3 政府を含む付加価値フローダイアグラム

政府、企業、家計の関係は、政府と企業が賃金を払い、家計が賃金を受け取る。政府と企業は、家計の労働者を取り合うライバルの関係である。企業は付加価値を実物資本である資本ストックとして蓄積する、対となる貨幣は家計の貯蓄である。政府は付加価値を貨幣資本である赤字国債で蓄積する、これも対となる貨幣は家計の貯蓄である。赤字国債は借金であるから資本の表現は間違いかもしれない。しかし、資本ストックも家計に対する企業の債務であり、赤字国債と対等である。フローダイアグラムでは、税収と資本減耗は同じ機能である。商品のコストであり、賃金からの徴収ではない。

ここまでは、企業と政府はライバルの関係である。しかし、政府が赤字国債の対として発行した貨幣の利用者は、家計と企業である。企業が貯蓄することも可能である。企業は資本ストックの蓄積が役割であるが、政府が貨幣を発行することで、貨幣の貯蓄が可能となる。

実際の現象を観察すると、赤字国債の対として発行された貨幣は、公務員給与を主とする給付金として家計に渡る。赤字国債を発行して支給した公務員給与がそのまま貯蓄となれば暴動を起こしたくなる。当然、公務員は生活費として利用し、貨幣は企業に渡り貯蓄となる。即ち、企業の内部留保が発生する。

さて、企業は内部留保をどうするだろうか。設備投資をする、設備投資では対の貯蓄が発生する為内部留保は減らせない。株式の配当として家計に還元する。使い道のない人は貯蓄するが、消費分は企業に戻る。株や債権への投資でも貯蓄は企業に戻る。役員報酬ではさらに騒がれる。

このモデルでは表現されないが、現実の現象では、日本銀行赤字国債を買い取ることで、使えない内部留保と返さなくて良い赤字国債の対が形成され、経済から隔離されている。内部留保は固定化されると思われる。

主題の政府支出は、図に示すように、賃金として支給され、消費に利用される。政府のない経済と比較すると政府支出と同額の消費が増える。既に政府のある経済において、政府支出を増やすと資本形成との競合が生じ、資本形成を抑制する可能性がある。