お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

経済主体

経済主体

図2は付加価値のフロー図であり、実物経済全体を含んでいる。貨幣については賃金だけが含まれる。このフロー図は、経済の基礎式を満たしており、経済モデルとして成立している。「お金は使うと無くなる」を公理としており、貨幣は循環ではなく、資源の取り込みで賃金が生成し、消費で消滅する。

f:id:yunopower:20210517103944p:plain

図2 実物経済の全体像

モデルの特徴は、経済主体が明示されないことである。経済に必要な要素は生産であり、個人を考えなくて良い。個人は複数の役割を果たすことも、無関係であることも、可能であり且つ無関係である。経済は、資源を資本ストックとして取り込み、分配により所有物とする。モデルの生産物は流体であり、財、サービス、付加価値、商品、在庫、生産設備、インフラ、資本ストックは区別されない。これらの区分は利用者の視点である。経済主体は明示されないが、貨幣の存在が経済主体を要請する。貨幣は、発行者と利用者の両者によって成立する。消滅する貨幣は発行が必要であり、さらに発行された貨幣の利用者が必要である。即ち、貨幣の発行と資本ストックを管理する企業体と、貨幣の利用と貯蓄を行う家計体が必要である。これも個人を割り振る必要は無い。

任意の商品を考えると、最終的に個人の所有物となる。所有物から時間を遡って考えると、消費の前は最終商品であり、その前は部品であり、その前は部品の部品であり、さまざまな資源にたどり着く。所有物はさまざまな資源が合流し、次第に大きな部品となって最後に商品となる。細かな源流が集まって河口に到達する川の構造と同じである。経済の生産工程は、一方通行の流れが合流を繰り返し最後に個人の所有物となる、循環の無い川の流れと同じである。

フロー図では、資本ストックは生産を通過し資本ストックに戻る循環がある。この循環を繰り返すことで、賃金分の付加価値を取り込み、最終商品にまとまっていく。ここでも、合流を繰り返すのであり、流れの交わりや交換は無い。循環でなく螺旋である。

「お金は使うと無くなる」この色眼鏡で見ることで、経済は一方通行の流れとして理解される。付加価値は生産で生成され、資本ストックに合流する。異なる所有者の所有物は合流できない、合流前に譲渡が必要である。合流には他者の所有物で無いことが条件となる。資本ストックはすべて一人の所有物である必要があり、架空の所有者の所有物、又は所有物でないと考える必要がある。一方、「資本ストックは所有物である」この色眼鏡で見ると、生産は貨幣と財の交換であり、貨幣は循環する。交換は所有物同士で成立するため、交換には相対する所有者が必要となる。交換は等価であり、価値は生まれない為、資本ストックは外部から付加価値を購入する必要がある。

このように、お金は使うと無くなる、資本ストックは所有物でない、生産は付加価値を生成する、この三つの命題は一組で成立する必要がある。