お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

定常状態

 

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図2 実物経済の全体像

定常状態

図2は付加価値のフロー図であり、「お金は使うと無くなる」を公理とした経済モデルである。生産物は流体であり、財、サービス、商品、在庫、生産設備、インフラ、付加価値、資本ストックは区別されない。流れる速度の違いで区分されるが、全ての付加価値は必ず所有物として分配される。

資本ストックからの流れが生産を通過して資本ストックに戻る循環が考えられるが、この流れは生産とは考えず、理想状態では存在しない。経済統計では中間生産物として付加価値生産から除外される。また、賃金Wから消費Cへの直接の流れは個人取引の流れであり、これも付加価値生産から除外される。中古売買はここに対応し、経済統計から除外される。サービス業は、資本ストックを経由する流れであるが、滞留することなく消費される。

ここで、定常状態を考える。定常状態ではストックの変動がないので、付加価値は、W→I→D→Cの一本道を一定量で流れる。賃金=資本形成=資本減耗=消費、このような関係であり、生産=資本減耗+賃金の関係式から、賃金は生産の半分である。定常状態の労働分配率は50%で一定である。

定常状態での生産額は、資本減耗半分、賃金半分となる。これは、資本減耗は過去の生産に対する支払、賃金は将来の生産に対する支払と考えることが出来る。トラック輸送で高速道路を利用した場合、資本減耗として高速代を支払う、これは過去の資本形成に対する支払である、同額の賃金は高速道路更新に対応する未来の資本形成に対する支払である。

ここで、賃金の意味が判明する。定常状態では、資本減耗と同額の資本形成が必要である。資本形成の実施は未定であるが、経済が継続するのであれば、いずれ資本減耗と同額の資本形成が必要であり、その対価を事前に支払うのが賃金である。資本ストックを消費させると同額の賃金が得られ、それは将来の資本形成に対する対価である。一連の作業が労働であり、賃金は労働に対して支払われるが、苦役に対する対価ではない。

どこか奇妙であるが、経済全体では合理的である。将来返却することを約束して、資本ストックを消費し、生産費用を事前に受け取る。資本ストックの新陳代謝は文明の進歩であるから、資本減耗の促進と資本形成の要請は、社会全体の目的と一致する。

図2の経済モデルから賃金は資本減耗から決定され、資本減耗は資本ストックと比例すると考えられることから、賃金は資本ストックと比例する。