お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

宇宙のお金

宇宙のお金

お金を知る方法として、消去法を利用する。お金で買えないものはお金の価値を持たないと考える。そこから、お金の守備範囲を限定し、お金の価値がどこから来るのかを見つける。

空気はお金で買えない、空気は無料なのでお金の価値を持たない。このようにお金で買えないものを探す。海を回遊するサンマ、山奥の鹿、自生する山菜、これら野生生物は購入できない。他人の持ち物、これは中古市場から買うことができるが、あなたの着衣を売ってほしいと言って買うことはできない。お母さんのお弁当も買うことはできない。これらは、お金に糸目を付けなければ買うことができるだろうが、それは経済活動ではない、お金の暴力である。お金を考える場合、それが経済活動の道具であることを忘れてはいけない。

このように経済活動で買えるモノを限定していくと、“付加価値”に辿り着く。生産活動で生産されたモノが付加価値となり、個人の所有物となると付加価値から除外される。新品の商品と中間生産物が付加価値であり、中古品と自然物は付加価値ではない。お金で買えるモノは付加価値であり、お金の価値は付加価値と対応している。

視点を変えて動物から見ると、すべての付加価値は無価値であり、お金も無価値である。動物にとって経済、付加価値、お金は仮想現実である。経済は人間が創り出した現実であり、生物にとっては仮想現実である。仮想通貨の出現で貨幣の本質が数値であると認識できると思うが、経済自体も人間の創り出した仮想現実だと理解できる。経済は、社会人にとっては現実であるが、生物としての人にとっては仮想現実である。

自然から見て経済が仮想現実ならば、経済は自然現象と無関係に価値を生み出すことができる。経済価値は2種類の方法で生み出される。ひとつは信用創造により預金と貸付金を対生成する。もうひとつは生産により付加価値と賃金を対生成する。ここで、預金を流用して賃金を払うことにより、相互の価値を統合している。現在の通貨経済では、預金がお金の代表である。

このようなお金の特徴は3つある。①付加価値が増えた時にお金も増える、②すでにある付加価値を入手するにはお金を支払う必要がある、③お金の総量は減少することなく増加する。これらの特徴はエントロピーの特徴と同じである。宇宙では新たな情報が生まれるとエントロピーは増加する。外部の情報を取り込むとエントロピーを放出する。宇宙全体のエントロピーは単調増加する。宇宙では情報が価値であり、エントロピーは宇宙のお金に相当する。

なんでもお金で買えると感じるが、それは経済の中で生活しているからであり、自然を見渡すと買えないものも存在し、実は中古品は付加価値ではなく特殊な売買であることもわかる。また、付加価値とお金の関係は、情報とエントロピーの関係と類似していることもわかる。結局、経済は人間が創り出した仮想現実であり、お金はその仮想現実のエントロピーの役割をしている。お金の理解が難しいのはエントロピーが難しいことと対応している。エントロピーは宇宙のお金である。