お金にならないお金の話

お金は使うと無くなる、これを公理とする

銀行の営利活動

銀行の営利活動

貯蓄=利子の関係について、銀行業務を推測し、現象を考察する。経済主体として、家計、企業、銀行を想定する。信用創造により企業が借金をすると、預金と貸付金が対で創られる。銀行は貸付金と預金の両建てであり、利益は無い。企業は借金を元手に付加価値を生産し、賃金として預金は家計に移動する。家計は付加価値を消費し、預金は企業に戻る。家計に残った預金が貯蓄であり、貯蓄と同額の付加価値が資本蓄積となる。貯蓄=資本蓄積。ここで、利子率を調節して、資本蓄積の対となる利子を生成することで、バランスシートは均衡する。資本蓄積=利子。この状態では、利子は銀行の資産であるが、バランスシートの均衡のために留保する必要がある。そこで、貸付に対する担保を確保し、利子と置き換えることで、徴収した利子の対と成る預金が生成され、利益として利用可能となる。

銀行主体で示すと、預金は信用創造により自由に増やすことができるが、何の儲けにもならない、むしろ経費が発生する可能性がある。預金の内、家計の貯蓄として増えた額が同額の利子収入となる。利子は中央銀行の利子率調節によって自動的に確保される。よって、銀行の最も重要な営利活動は家計の貯蓄残高を増やすことである。次に、確保した利子に対応した担保を計上することで、利子は利益として利用可能となる。よって、第二の営利活動は担保の確保である。

銀行の活動方針は、家計の貯蓄を増やし、同額の担保を確保する。この時、融資は最小限に押さえる。この活動方針は、インフレ経済の銀行の活動と一致する。貯蓄=利子の関係は現象をうまく説明する。

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銀行の営利活動

この活動を外部から観察すると、家計から現金を集めて、それを企業に融資し、担保を確保している、と見える。しかし、預金は貸付金と対で創造されるので、融資によって預金ができることは確かである。貯蓄と預金が異なる概念であることを前提とすれば、(A)と(B)の両立を理解できる。

 (A) 銀行は、家計の貯蓄を集めて企業に融資を行い、担保を確保する。

 (B) 銀行は、融資によって預金を増やす。

家計の主観では、自分が消費を我慢して貯蓄することで、企業は貯蓄と同額の資本を増やし、銀行は貯蓄と同額の利子を受け取る。二重搾取であり、どんなに働いても楽にならないのは、資本主義が原因である。

客観的には、経済成長の王道は拡大再生産であり、拡大再生産に最適化されたシステムが信用貨幣経済である。労働者も最大限の豊かさを享受している。但し、拡大再生産を続ける限り、楽にはならない。

貯蓄を増やすこと、資本ストックを増大させること、利子を払うこと、これらは同一現象の異なった側面であり、すべてが豊かさ、経済成長の条件である。貯蓄を減らし、楽をすることは衰退に直結している。